力士特集第一弾 北の怪童
特に相撲好きというわけはないのですが、ビジネスとしてみると興味深いのです。
まあプロレスも同じなのですが、少々違った意味で。
かって、北海道の農協職員の家に生まれ(誕生日はNHKで大相撲中継が開始された日)、少年時代から体格に恵まれてた男の子がいました。
ただの巨漢ではなくスポーツ万能。特に柔道は強く中学1年で初段となり、高校生を破って町の大会で優勝するほどでした。
多くの相撲部屋がスカウトに駆けつけました。
そんな中の一コマ。
親方「本当に良い子なんだよ。体格も、運動神経も、性格も」
女将「またその話ですか。そんなに良い子のなら会ってみたいですね」
親方「ああ、だが、こんな小部屋には来て貰えないだろう」
女将「そうですね。大きな部屋の人達も誘っているんでしょう」
親方「ところで、最近何を編んでいるんだい」
女将「ああ、これですか。靴下です。北海道は寒いでしょうし、体が大きいと着る物がなかなか大変でしょう。特に靴下なんか」
親方「あの子にかい」
女将「別にうちに来て貰えなくてもいいじゃないですか。お相撲で立派になってくれれば」
親方「そうだな」
その手編みの靴下は、親方から少年の手に渡り、感激した少年は大部屋ではなく、その親方の部屋(三保ヶ関部屋)に入門しました。
1967年1月場所初土俵、中学2年です。
当時は中学生でも場所を勤めることができました。
四股名は「北の湖」。
月日が経って、1972年1月場所、18歳で新入幕を果たします。
史上最年少です。
「史上最年少入幕のご感想は如何ですか」
「長かったです」
1967年1月場所初土俵の彼は、翌年には幕下に昇進していました。
15歳、中学3年生の幕下昇進は初めてでした。
そのれから3年かかっていますから、本人には早いという印象はないのでしょう。
幕下以下、三段目、序二段、序の口のことを各段といいます。
序の口を除けば150人前後がひしめいています。
そこで一場所7番の相撲を取った結果で、次の番付が決まります。
優勝すれば飛躍的に番付が上がりますが、彼は一度も優勝していません。
それどころか三段目では全敗も記録しています。
地道な苦労が実ったという気持ちなのでしょう。
その後、21歳2ヶ月で史上最年少横綱となります。
「憎らしいほど強い」
そう呼ばれ、ヒール(悪役)を一手に引き受けます。
あんこ型でふんぞり返って歩く姿(その姿勢でないと歩けないのですが)や、倒した相手に手を貸さない所作(これは手を貸された方が屈辱的に思うからだそうです)が、憎らしく映ったようです。
「(観客から)負けろと言われていた頃はこっちも燃えて来る性格だから良かった」
とはいへ、優勝決定戦には滅法弱く(通算成績は3勝5敗)、緊張しやすい性格が見えます。
本割りで圧倒的な強さを見せた彼も、やがて足腰の故障に悩まされ、休場が続きます。
「引退間際になって頑張れと言われた時は自分でも情けなかった。そのために勝ちたいという意欲も薄れてきてしまっていた」
1985年1月場所、日本相撲協会悲願の両国国技館がこけら落としです。
協会は新国技館に横綱がそろい踏みすることを強く望みます。
引退覚悟の強行出場。
二日続けての惨敗で引退の運びとなります。
一説には休場続きの横綱が協会にとって重荷になっていたとも言われます。
当時の理事長に「散る覚悟で」と言われたとも。
まあ、きつい商売ですね。
彼が通学したのは両国中学で、当時は力士が多く通学しており、本場所と学校とを両立させていたそうです。
もっとも厳しい稽古や雑務に追われていますから、事業中は居眠りばかりだったそうです。
そういう学校ですから、先生も周りの生徒も「お相撲さん」だからとおおめに見てくれたようです。
ある時、彼が女将さんに得意満面で通知票を見せたそうです。
女将さんが開いて見ると、体育が5なのはいつも通りですが、その他に2が一つだけあったそうです。
いつもは体育以外は全部1だったそうです。
まあ、授業は睡眠時間ですからね。
しかし、彼の記憶力は驚異的で、自分のすべての取組を憶えているばかりか、ライバルの取組も憶えているとか。
インタビュアーがうる覚えで質問すると、「〜年の〜場所〜日目の結びですね」などと返してくるそうです。
それで現在はかなりの博学らしいです。
こいう人ですから、理事長職にある今も、力士の立場に立った発言が散見されるのでしょう。
そういえば、北の湖がもっと苦手にしていたのが、現在の高砂親方の朝潮関で、7勝13敗だったそうです。
朝潮関は、土俵上でマイペースな所作をして、立ち合いも合わせようとしないらしいです。
一方の北の湖は、せっかちだったそうで、やりにくかったらしいです。
まあ、「朝潮の顔がおかしくて、力が抜けた」とも言っているそうですが。
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