「ライブドア監査人の告白」という本を読みました。
これは、LD幹部が逮捕された時点での監査人の著作です。
LDの監査に関与していたのは、1年間だけなので、例の事件当時に監査をしていた人ではありません。
ただ、この人は監査法人の代表社員(出資者兼経営者)でしたので、元々ある程度の情報を持っていたり、後日知りうる立場にいた人なので、貴重な証言と言えます。
但し、一審結審前の著書ですから、判決に対してのコメントはありません。
私が知りたかったのは、
何の罪状で訴追されたか、
上場廃止に追い込まれた原因は何か
でした。
訴追は、「有価証券報告書の虚偽記載」のようで、風説の流布ではないようです。
上場廃止に追い込まれた原因については、直接触れられていません(上場廃止前の著作なんでしょう)。
が、その理由は、まあ推測できました。
本来は、粉飾疑惑のある、今話題の証券会社と比較したいところですが、そちらの情報が少ないので、過去の粉飾決算を行った会社との比較でお話ししましょう。
その前に、まず、上場廃止になる理由ですが、
有価証券取引書等に「虚偽記載」があり、その影響が重大な場合、
監査報告書等で「不適正意見」、「意見差控」となり、その影響が重大な場合
ということになります。
まあ、それで一般に、粉飾決算をすると上場廃止になる可能性がある、と言われます。
実際は、今回の証券会社の例もあるように、ケース・バイ・ケースです。
それにしても証券会社に対する東証の説明は分かりにくかった。
説明責任を果たしていない気がします。
もっとも、「ちゃんと説明したけど、記事にならなかった」という
可能性もありますが。
で、実態論的な話しをすると、企業の存続が困難と判断されると、上場廃止になると考えて良いと思います。
実は、債務超過になると、翌年の決算で解消されなければ上場廃止になります。
債務超過の会社は、存続が危ういですから、分かりやすいですね。
これが、一つの解明の鍵でしょう。
では、粉飾決算をした会社はどうか。
過去の例ですと、大きな粉飾決算が行われる理由は、資金調達をしたいけど、業績が悪くて、資金状況も悪いためできない、というものです。
そこで、業績を誤魔化して、新たな資金調達(例えば、銀行からの借入)を可能にする条件を整えようとするのです。
で、行われるのは、架空取引の計上です。
つまり、実態がない売上をあげるわけです。
例えば、出荷していないのに売上をあげる。
出荷はしているけど、翌期になったら返品させる。
何のサービスもしてないのに、売上をあげる。
と、いったようなことです。
これらは、そもそも架空ですから、入金することもなく、従って会社の資金繰りは何ら改善されません。
ですから、この架空取引がなければ、例えば銀行も融資してくれないわけです。
そうすると、会社は存続が危うくなりますから、潰れそうな会社の株式を流通させるわけにはいかないので、上場廃止になるわけです。
まあ、「虚偽記載」で上場廃止になった事例は少ないんですがね。
ですから、ここでクローズアップされるのが、「虚偽記載」を正した場合の、「会社の存続可能性」なんですね。
私の疑問は、LDの場合、利益は兎も角、お金はありましたから、会社の存続自体は問題がなかったんです。
なのに何故、上場廃止になったか?
勿論、「本業でちゃんと稼いでいなければ、いずれは破綻するだろう」という考え方は分かりますが、上場企業には赤字企業は結構ありますし、それで上場廃止されては、株主の立つ瀬はないでしょう。
で、前提として、LDの粉飾に関して、内容を少しお話しします。
大きく2種類あるんですが、いずれも会計処理の問題です。
まずは、単独決算の問題。
次の期に子会社になることが決まっている会社との、実態のない取引の計上である。
書類を作って、web関係のコンサルティングとシステム構築の仕事をした体裁を作ったものである。
実態はありませんから、LDは取引がないのに入金したわけですね。
もう一つは連結決算の問題です。
この会社の所有者は、実質LD傘下の投資事業組合なので、本来連結決算の対象とすべきである。
従って、この会社との取引は連結決算上は内部取引扱いで、売上も利益も出してはいけなった。
この二つを合わせると、
子会社との取引だから、売上にはならない。
その会社からの入金は、たんなる資金の移動だということです。
これを検察は「預金の売上への付け替え」と言っていますね。
で、これを是正した場合、売上も利益も、公表した損益計算書よりも少なくなります。
およそ53億円だったかな。
ですから「虚偽記載」という主張ですね。
でも、お金自体はあるんですね。
検察の言う通り、会計処理(要は仕訳)は変ですが、子会社のお金が親会社に渡っただけで、増えも減りもしていません。
LDって、お金だけは持ってました(1000億は超えるらしい)から、倒産する心配はないんです。
粉飾した額も、過去事例の70分の1とかですし、追徴金を払っても、お金が残ります。
東証のあげた上場廃止理由は、以下の通りです。
経常損失を計上すべきところを多額の経常利益を意図的かつ組織的に計上した。
これは、その金額において重大であり、
投資者の投資判断にとって重要な情報を故意に偽った点で悪質であり、
これを組織的に行った点で
上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ないものである。
後日、経営陣の逮捕も理由に挙げています。
ということは、
損失を利益と偽った、
組織的犯罪と立証された
場合に、上場廃止と読めます。
つまりは、内部統制(社内の不正や間違いのチェック機能)や取締役会の監視機能が、機能していないと「立証された」会社は、適格性に欠けるということでしょうか。
だとすると、理由としては分かりますが、過去の粉飾の事例でも、
損失を利益だと偽って、
経営者が不正を主導したと「立証された」
ものもあり、有罪判決を受けていたと記憶しています。
ここで、今回の某証券会社の場合と比較してみましょう。
このケースは、仕組みは概ねLDと同様の方法での、連結決算からの子会社はずしによる利益の創出ですが、元々経常黒字で黒字を大幅に水増しした(180億円)ものです。
水増しした理由は、新規社債発行(500億円)のためだったようです。
東証の発表した上場維持の理由は、以下の通りです。
赤字を黒字と偽る粉飾目的ではない。
過去の例に比べて、水増し額が多くはない。
組織的、意図的とはいえない。
日興の役員の不正への関与は否定できない状況にあるが、組織的・意図的に行われたとまではいえない
つまり、
利益の水増しで、元々経常利益は出ている、
経営者の犯罪は立証できなかった、
組織的・意図的だったとは立証できなかった
ということでしょうね。
大きなポイントは、
元々黒字であること、
組織的関与が立証されないこと
でしょうか。
その他の違いをあげると、以下の通りになります。
まず、LDが「東証1部・2部」上場企業ではなく、「東証マザーズ」上場企業だという点が、過去事例との違いですね。
私は、元上場コンサルティングをしていましたので、両者の上場前の内部統制や取締役会の機能の仕方というか、整備状況の成熟度に差があるのは分かります。
それから、これは前述の証券会社との違いですが、外資系金融グループが買収に名乗りをあげた点ですね。
この差は大きい気がします。
真っ当な買い手が付けば、周囲への影響を考えて、上場維持という選択もあるんでしょうね。
ちゃんとした大企業が買い取って、経営者を送り込んで、内部統制もきちんと整備することができれば、上場していても問題がないということですか。
長銀~新生銀行のパターンですね。
LDには、この手の買い手が付きにくいんでしょうね。
ベンチャーだけに。
ただ、そういう会社と知らずに株を買った投資家や取引先は、たんなる不運で片づけるんでしょうかね。
投資先や取引先の業績悪化で損失を被ったのは、自己責任になります。
企業の犯罪で損失を被れば損害賠償責任を追及することになります。
法的にはそうなりますね。
で、企業の内部統制や取締役会機能の整備状況のチェックは、
上場時に、東証と上場のための証券取引法に準じた監査を行う監査人
によっておこなわれます。
上場後は、会社から委託された監査人によって、毎年チェックされます。
後者は、一審は結審されましたが、民事訴訟はこれからですね。
監査法人の組織的行為ではなかったので、監査法人は証取法では
訴追されていません。
民事訴訟はどうなるんでしょう。
もうこの法人はなくなりましたが、社員(出資者)は無限責任ですから。
前者は、証取法違反の対象にはならないでしょうが、民事はどうなんでしょう。
もっとも、こちらも監査法人の方はなくなりましたが。
上場廃止の影響が大きいだけに、何か釈然としません。
まあ、たんにお金がないだけなら、会社更生法の適用を受けて、破産管財人による再建という道に進むんですが、そういう問題じゃないですからね。
でも、上場廃止にならなければ、被害は少なくできるわけで、こういう場合にも、管財人みたいな役割を立てて再建できると良いんですが。
過去に例のないケースなので、対応が想定されていないんでしょうね。
株主って、会社の所有者なのに、こういう場合は無力ですね。
私が昨日買った株の会社は大丈夫だろうか?
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