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2007年8月22日 (水)

栗山千明特集第三弾「バトルロワイアル」

さて、長くあいてしまいましたが、女優特集三人目、栗山千明の第三弾です。
高見広春(たかみ こうしゅん)原作の映画化作品「バトルロワイアル」です。

1997年、第5回日本ホラー小説大賞の最終選考作品ですが、中学生どうしが国家命令により、最後の一人になるまで、お互い殺し合いをするという衝撃的な内容のため、審査員に猛烈な非難を受けました。
かなり感情的です。

「非常に不愉快」
「こう言う事を考える作者が嫌い」
「賞の為には絶対マイナス」

これは新井素子が、その文体故にコンクールで物議を醸したのと並び称される出来事ですが、こちらの方が明らかに感情的なもので、審査員全員が敵に回りました。
しかし、このことが口コミで広まり、「このミステリーがすごい! 1999」にて「いったいどんな小説なんだ、ぜひ読んでみたい」という声が沸きあがり、1999年についに太田出版より出版され、ベストセラーとなりました。

そして、高見氏は「十分稼いだのでもう新作を書くつもりはない」そうです。

で、映画版ですが、「オリジナル版」と長尺の「特別編」がありますが、後者は人物の背景が描かれていて、分かりやすくなっています。

原作は元々「三年B組金八先生」のパロディとして発想されたそうですが、どちらかと言うと「信じあうこと」がテーマの青春小説という感があります。

映画は深作欣二監督の実質的な遺作ですが、まったくの深作作品といっていいでしょう。
鳥肌が立ちました。
取り憑かれたように何度も何度もDVDを見ました。

深作監督は昭和一桁の生まれです。
この世代の方々は、敗戦時の体験によって大人への不信感を持っている方が多いようです。
昨日まではばりばりの軍国主義者というか全体主義者だった大人が、敗戦により民主主義者であり人道主義者に豹変した。
何人かの人に聞きましたが、かなりショックだったそうです。

この作品は、その逆を描きます。
人道主義者だと思っていた大人が、急に殺し合いを命じます。

原作も映画も、中学生が殺し合うこと自体には意味がありません。
一応の意味づけはされていますが(理由は異なりますが、中学生に対する一種の抑止策です)、効果がないことは明白で、このお話しが夢物語であることを主張する設定になっています。
全国の中学校の中の一クラス(原作では都道府県毎に一クラスずつ)が選ばれるだけですから、何の抑止力にもなりません。

配役はかなり年齢無視で、良い役者を揃えています。
山本太郎が良かったです。
飄々としながら影があって。

でも、何といっても痺れたのは千草貴子役の栗山千明です。
原作でも印象的な役であり、シーンなのですが、映画の場合、深作監督はこのシーンを撮るために、映画化したのだと確信しました。

以下ネタバレです。

陸上競技選手の千草貴子は、異常な状況の中でも一人練習を続けます。
そこに彼女に思いを寄せる男子生徒が現れ、自暴自棄になり無理やり思いを遂げようとします。
逃げる千草に向かってボウガンの矢が放たれる。
原作では、矢は千草の太ももを貫いて、千草は倒れます(映画はかすっただけ)。
その時、木の葉で頬を切ります。
千草は逆上します。
  原作のこのシーンは凄い。
  打ち抜かれた太もものことは気にもしない。
「私の顔を傷つけたね。私の全存在を賭けて、あんたを否定してやる」
千草は男子生徒をナイフで、滅多刺しにします。
返り血を浴びた千草は、相馬光子(柴咲コウ)にピストルで撃たれます。
やっと逃げたところに幼馴染みの男子生徒が通りかかります。
彼は千草を座らせて肩を抱きます。
「好きな人に告白したいんだ」
「私じゃないよね」
「違う・・・・・・」
「そう、もう暫くこうしていて。もうすぐ終るから」
千草は絶命する。


深作監督は何を描きたかったのか。
今風のキレルことを描いたとも取れます。
しかし、そうではないでしょう。
どの様な状況下でも、自分の信じる道をひた走る千草貴子。
それを邪魔された時、身を挺して阿修羅のように戦う千草貴子。
そして、また元の愛らしい少女に戻る千種貴子。
深作監督にとっての一つの理想、純粋な魂の表現だったと感じました。

このシーンには取り憑かれました。

踊らされるな、自ら踊れ。

栗山千明の演技も凄かった。
演技指導はまったくなかったそうです。
監督も満足だったのでしょう。

まあ、これで今日まで続く、栗山千明の印象ができあがったわけでもあるのですが。

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